旅の備忘録

自転車日本縦断とかいろいろ

【自転車日本縦断旅】シュッとしてオリーブ【番外編:小豆島一周】

 

今回は番外編。

以前の記事で述べたように、本番を決行する前にちょっと練習挟みたいなという事で。

1泊2日で小豆島一周、通称マメイチに挑んだ際の記録です。

 

 

 

1日目:坂手港から時計回りに半周

 

2022年3月末。

早朝に家を出て神戸港へ向かう。もっとも、朝と呼ぶにはまだ空が暗過ぎるけれども。

日の出前の海辺は風が強い。横殴りの風だ。欠航するんじゃないかと思いつつふらふらとフェリーターミナルまで漕ぎ進めたが、船はどうやら通常運行のようで一安心。

 

朝6時、神戸港を出港し、小豆島の坂手港まで自転車と共に揺られること約3時間半。

 

明け方の出発。日の出を迎えたばかり

 

ホテルのような船内

 

無事着岸。眠ぅ.......

ようこそ小豆島へ!

 

曇り晴れ。軽い雲が空に薄く広がる。

3月とは思えないぐらい暖かな気温で、自転車を走らせれば汗が滲む。

同じ船便にもう1台、自分と似た積載の自転車が結び付けられていた。恐らく同じような目的の方だろう。

 

下船時にタイミングが合い、声をかけていただく。

 

「どっち周りですか?」

 

島の一周は大体、時計回りが推奨されている場合が多い。

 

「え、あ、メジャーなほうです...」

 

メジャーなほうってなんやねん。

『時計回り』が咄嗟に出てこず、不慣れ感丸出しの返答をしてしまった。先が思いやられる。

 

 

さて、気を取り直して出発。

先ほどお会いした方は逆回りとのことで、どこかでまた会うかもしれませんね~と言いながら走り去って行った。

自分はというと、今日は坂手港から40km程進み、田井浜キャンプ場で一泊予定。

 

1日目の大まかな工程

 

坂手港から西へ突き出た陸の先へと進めば、二十四の瞳映画村にたどり着くようだ。その昔、映画のロケ地となった場所とのこと。

学校が舞台だったっけか。恥ずかしながら、二十四の瞳は本も映画も未履修だったので内容を知らず。是非ともしっかり観てから訪れたい場所だと思ったので、今回はパスして県道28号沿いを北上する。

 

出発から程なくして、醤油の甘辛い香りに包まれる。小豆島は醤油作りが盛んであり、全国でも5本の指に入る香川県の醤油生産量のうち、実に半分を小豆島での生産が占めているという。

 

醤油の香りに誘われつつ漕ぎ進めていると、いかにも昔ながらの工場といった建造物が立ち並ぶエリアへと突入した。

 

 

小豆島南東部、「醤(ひしお)の郷」と呼ばれるエリア。島の中でも特に醤油蔵や工場が集中して軒を連ねる一帯の名称である。

思いがけず出会ったノスタルジックな景色に、どこか力強さと寂しさの入り混じったような印象を抱く。

 

大正時代に建設された合掌作りの工場を改装して作られている

その一角で存在を放つのが、マルキン醤油記念館。醤油作りの歴史からマルキン醤油の成り立ち、醤油に関する知識まで、幅広く「醤油」を知る事ができる。醸造所の見学も一部可能で、目の前で醤油が圧搾されていく様子が見られる。

名産品を知る事は、その土地を知る事と言える。ただの自転車一周では勿体ないので、ここはひとつ勉強といこうか。

 

入館料と引き換えにいただいたお土産サイズの醤油瓶を片手に、ぐるっと見学。

 

木桶仕込みの醤油生産も減少の一途を辿っている

 

普段、食事や料理の際にあれだけ登場する醤油なのに、今までまるで関心を抱く対象でなかったという事に気付かされた。醤油を支えたかつての技術は今なおこの地で、脈々と受け継がれている。

 

記念館の向かいの売店で醤油ソフトクリームなるものが売られていたので、エネルギー補給。これに使用されている醤油もまた、木樽で醸した自然派の醤油とのこと。それだけで美味しそうに聞こえるのだから、チョロいもんだ。

 

みたらし団子のような甘じょっぱさがクセになる

 

もうちょい中の写真撮っときゃ良かったな、と執筆している今になって後悔している。

 

記念館を後にして少し漕ぎ進めると、小豆島唯一の酒蔵であるMORIKUNIを発見。

醤油蔵の次は酒蔵ときたが、決して今回は蔵巡りに来島したわけではない。たまたまですよ。たまたま。日本酒は大好きですけどね。

 

 

自転車乗りなので飲酒はできず、ちょっと立ち寄っただけ。常連と思わしき方が、併設されているカフェで店員の方と話しながらくつろいでいる。静かなアトリエのような空間だ。

個性的な銘柄の日本酒が並ぶ。敢えてここには書かないので、是非調べてみてください。

 

ここの酒蔵は別の建物でベーカリーもやっている。そっちならアルコールの問題も無いだろうから、パンだけでもいただこうかしら。

 

ドアの前に『本日定休日』の文字。

 

......気を取り直して先へ進む。

 

 

国道436号線を西へ漕いでいく。瀬戸内海沿いは快晴でなくとも心地よい。

 

 

太陽が上がってきた。結構暑くなってきたな。

 

それなりに平坦な道をすいすいと進んでいき、見えてきたのは有名な映えスポット、小豆島オリーブ公園

中でも、ギリシャ風車は特に人気のようで、小豆島と言えばここを思い浮かべる方も多いのではないだろうか。実写版魔女の宅急便のロケ地。

今日も魔女見習いが複数人、箒にまたがってぴょんぴょん跳ねている。

 

ここに限っては晴れてた方が良いね

 

せっかくなので、オリーブ園内を散策しよう。

公園と言えど平地ではなく、勾配がキツい坂一帯を占めている。

結構な坂道を登り、見晴らしの良い場所から瀬戸内海を見下ろした。美しく、開放的な風景が堪能できる。

 

オリーブの木々の先に瀬戸内海が広がる

オリーブ公園の名に恥じず、あちらこちらに多種多様なオリーブの木が植わっている。

オリーブの葉は細長く、縦に1本白い線が入っており、触ると固そうな見た目をしている。オリーブの実の収穫は秋~冬なので、今回訪れた際はひたすら葉だけがわさわさと生い茂っていた。

 

 

これ全部オリーブの木です

オリーブにも種類があるようだが、正直、素人目にはあまり区別がつかなかった。

にしても、オリーブのそのシュッとした葉の形は、それだけでどこかオシャレでスタイリッシュな印象を与える。見た目で得しているように思う。

自分もシュッてなりてえなあ。努力が足らんか。

 

 

気付けばお昼時、そろそろご飯にしよう。折角なので小豆島にゆかりのあるものが食べたいな。

という事で、オリーブ園に隣接する施設のレストランで、オリーブ豚カレー丼を注文。

 

味噌汁付き

カレーにマスキングされてオリーブ豚と普通の豚の違いがいまいちわからなかったが、出汁が効いていて美味しかったので問題ない。

 

 

お腹が満たされたところで、よくよく考えたらまだ目標地点の3割ぐらいしか進めていない事に気付いた。

既に太陽はてっぺんを過ぎている。夕方までにキャンプ場に着かなければ色々と詰む。これはペース配分をミスったかもしれない...

とりあえず進む事を優先しよう。三都半島をパスし、国道をひたすら西へ。小豆島最南端、釈迦ヶ鼻も気になるスポットではあったが、またの機会に。

 

 

道が少しでも海沿いから離れると、途端にアップダウンが発生する。四方を海に囲まれている島である事を忘れる程、山のテイストを帯びる。こりゃ結構キツいぞ。

自転車で漕ぎ切れない急勾配の坂では、地元のおじいさんだろうか、自分と同じようにして自転車を押して歩く方がいらっしゃった。

 

「兄ちゃん、えらい荷物で大変やなあ、頑張ってや」

 

何気ない励ましの言葉が、存外心身に染み渡る。

 

 

小豆島南西部、土庄港へ差し掛かると、映えスポット2つ目「エンジェルロード」が程近い。1日2回、干潮時刻前後だけ現れる砂の道。

進む事を優先すると言った矢先ではあるが、たまたまタイミング良く干潮が近かったので立ち寄ってみた。

細かな砂利を踏みしめながら細い入り口を抜ける。慎重に歩いているにも関わらず、靴に砂が入るのは何故だろうか。

 

すると急に景色が開けた。

 

 

ええやん。

昼過ぎの控え目な空がエンジェルロードのエモさを際立てている。

家族連れから友達同士、カップルまで様々、観光客で賑わっていた。お一人様で来る場所では無かったか。

 

澄んだ海が綺麗だ

 

しばしの間、休憩も兼ねて海辺でゆっくりと過ごしていた。

ただの映えスポットではなく、時間が経つのを忘れさせる不思議な力がある。

 

 

さて、本当は夕方の神秘的な姿を拝みたかったが、ただでさえ時間が押しているのだからこれ以上留まってはいられない。

靴に入った砂を落とし、小豆島外周ルートへ戻る。大深山方面へは時間の都合で省略。

 

 

迷路のまちを突っ切り、県道253号線に沿って北西へ。島の南東部よりも人っ気が少なく、道を漕ぎ進む事に集中するエリア。

 

おっと、忘れていた。島の北部はスーパーが殆ど存在しないので、マルヨシセンター土庄店で晩御飯を買っておこう。

 

細かなアップダウンが増えていく。先程まで目の前にあった海が、いつの間にかはるか上から見下ろす場所へと位置している。ダウンヒルで一気に元の景色に戻る。変化が無いようで逐一変化する景色が面白い。

 

しかし、フル積載の自転車で登る上り坂が奪う体力を甘く見ていた。

着実に消耗しつつあるが、気合いで前に進んでゆく。足が痛い。

 

 

途中で県道26号線に合流し、北部を東に進む。かれこれ20km弱漕ぎ続けていただろうか。南部と比べると閑静な印象を受ける。特別、寄り道することもなかった。

 

ようやく本日の宿泊地、田井浜キャンプ場へ到着。

海を間近に臨めるロケーション

......ここ?という場所にキャンプ区画を示すような看板が立っていた。戸惑いながらも敷地に入ると、他にキャンプ客はおらず、今夜は自分一人だけのようだ。

ともかく、明るいうちに到着できて一安心。

 

疲れたけど気力は意外と持つもんだな。何十キロも漕いでたら途中で飽きるかもしれないという不安があったが、杞憂に終わった。

海も山も、同じようで全て異なる景色だ。モチベーションは全く落ちず、1日楽しんで進み続ける事が出来た。

 

余談だが、自転車を立てるスタンドが積載の重量に負けて壊れてしまった。お前はもう、自立出来ない身体になっちまったんだ。

そのうち壊れる気はしていたが、ちょっと寿命が早過ぎやしないか。まだ旅は始まってすら無いんだけれど。

 

 

慣れない手つきでテントをこさえて、今日の活動は終了。買っていた晩御飯を食べていると、おじさんがキャンプ場代の集金に来た。

明日は早めに活動開始したいので、もう寝る準備を整えてしまおう。歯を磨き、ボディシートで身体を清め、スマホとにらめっこしながら翌日の行動計画を練ってゆく。

 

夕日が綺麗だ。写真に収めておけば良かったな。

 

 

 

2日目:残り半周と寒霞渓ヒルクライム

 

夜明け前。

強風と寒さで目が覚めた。荷物を除けた途端にテントが吹き飛びそうだ。

もしや今日は荒天か。天気予報が外れたんか?

 

いや、違う。実は昨日の朝も同じ環境下に居た、という事を理解するまでに少々時間を要した。

日の出前の海辺は風が強い。

人生初のテント泊で結構な強風に出くわして若干ビビッていたが、しばらく寝袋にくるまっていると段々落ち着いてきた。夜明けまで待てば穏やかになるだろう。

 

しかし、もう1つの問題が解決していない。

寒い。寒すぎる。想定外の寒さだ。

昼と夜の寒暖差を舐めてはいけない。ましてや、風の強い海辺だと尚更だ。

当方暑がりなので出番がないだろう、と思っていた上着を被る。いや、上半身より下半身が冷えるなと気付いてからは、被っていた上着を足に巻き、寝袋の中でひたすらさすっていた。

 

これは良い教訓だ、と現状をポジティブに捉えつつ、現実として辛い事には変わりないと嘆きながら夜明けを待つ。睡眠が浅かったのだろうか、そんな状況でも少し記憶が飛んでいる時間もあった。

 

 

次第に明るくなってきた。風も気温も穏やかになっていくのを感じる。

家帰ったら防寒着、整えておこう。

6時30分、テントを撤収し、持参していたカロリーメイトをかじって出発。

 

 

今日はとりあえず、国道沿いに残り半周を漕ぎ切ることがマストだ。帰りの船の出航まで時間が余るだろうから、余った時間で何しようかな...

 

......魔が差した。寒霞渓、登るか......?

 

2日目の大まかな行程

 

昨日の午後に引き続き、島の北部はあくまで自然美を楽しむエリア。筋肉痛でバッキバキの足をほぐすようにして、アップダウンのある道をひたすら漕ぎ進める。

 

上がる時はこれぐらい上がる

今日もうっすら曇り空。自転車日和だ。

 

 

島の北東部、坂を少し登った先に石碑が建っている。

さぬき百景No.13、福田海岸。

 

 

抑揚のついた海と陸の景色が面前に広がる。控えめな標高だから立体感が感じられて良い。

 

さぬき百景とはその名の通り、香川県の観光地・景勝地として1968年に選出された100のスポット。小豆島にも18のスポットが存在するらしい*1。ここまで来ておいて全くその気配を感じなかったのは、単に自分が周りを見ていなかっただけなのか、はたまた......

後で解った事なのだが、おそらくここの一番のビューポイントは、上の写真の右半分にぽこぽこと浮かんでいる小島のほうだったようだ。相変わらず写真が下手。

 

昨日あれだけ海辺に集っていた観光客もここには誰一人おらず、この落ち着いた開放的な空間をしばし独り占めしていた。

朝から気持ちが良い。先に進もう。

 

 

国道沿いに東部をしばし南下していると、本日2箇所目の景勝地が近づいてきた。

南風台~希望の道~城ヶ島

 


南風台と城ヶ島は、福田海岸と同じくさぬき百景に選定されている場所。

この2つを結ぶのが希望の道だが、ここは昨日訪れたエンジェルロードと同様に、干潮時のみ道が現れるという。あちらとは打って変わって、人っ気が全く無いじゃないか。

ある意味、「もう1つのエンジェルロード」とも言える、穴場絶景スポットだ。

 

もっとも、上の写真からはその良さが全然伝わってこないのだが、そこは大目に見て欲しい。

 

空気が澄んでいれば、対岸に淡路島が浮かんでいるのが見えたのだろう。少し霧がかっていたお陰で、どこまでも海が続いていきそうな展望が広がっていた。

全てを飲み込んでしまうような解放感。身体ごと持って行かれそうだ。

 

 

よく見たら、桜が咲き始めているではないか。

海と山とオリーブばかり見ていたので、今が3月末である事を忘れていた。

 

 

桜でしか表現し得ない暖かな色味。春の息吹を感じる。

 

 

朝からほわほわとした気持ちでペダルを回していたが、存外早くスタート地点に戻って来れそうだ。南東部をぐいっとショートカットし、再び醤の郷付近へと戻ってきた。

 

さて、時刻は10時半、船の出航は15時15分。

 

寒霞渓、登ってみるか......

 

 

日本三大渓谷美の1つ、寒霞渓。頂上は標高約700m、そこから約100m降りた場所に展望台があり、渓谷と海と空の入り混じる素晴らしい眺望が広がる。

小豆島の中央東寄りに位置し、東西南北4つのルートで舗装道路が整備されている。無論、登山道もロープウェイも完備されており、多くの観光客で賑わう。

 

今回は南側ルートに挑む。距離は長いが、勾配が他ルートよりも緩やかであること、また帰りの船が出航する坂手港が近いことから南を選んだ。

 

 

昨日も通った国道沿いを少し進むと、「この先右折、寒霞渓」の青看板が見えてきた。

素直に従い、県道29号線に乗る。2km程まっすぐな道が続くようだ。

おや、意外と平地かと思ったのも束の間......

 

 

頂上までのルートのうち最も急勾配の坂*2が、最序盤に出現。

 

 

え、待って。ほんま無理。ペダルが全く回らん。

まだ登山口にすら至っていないのに、いきなり自転車を押して歩くとは思わなかった。

せめてちょっとでも荷物をどこかに預けて来れば良かった。

フル積載のままである事、いやそもそも寒霞渓に登ろうと決めた事自体後悔の念が湧いてきた。

 

...いや待て、ここで折れていては、これからの旅なんぞ出来たものではない。

何が何でも引き返してはならんのだ。自分で自分のケツを叩きながら、最初の難関をゆっくり、ゆっくりと越えていく。

 

 

やがて傾斜が緩やかになった。左を見ると立派なダムがある。

 

内海ダム

 

奥行きのある景色に圧倒される。少しばかり心が洗われた。

釣りしたら何か釣れるんかな。ブラックバスとか。

 

 

(※ここから頂上まで写真撮る余裕ありませんでした。スミマセン)

 

 

先へ進む。ようやく、山っぽい道になってきた。しばらく穏やかな坂を登っていく。

さらに1.5km程進むと、ロープウェイの麓駅、紅雲亭駅へ続く道への分岐点が現れる。

勿論、頂上へ続く道を進む。名残惜しさが無いと言えば嘘になるが......

 

 

残り10km弱。ちょっとキツいが漕げん事は無い位の坂が、ただひたすら続いている。

スタミナの消耗が激しい。予め買っておいた補給食と水分が物凄い勢いで減っていく。

途中に1箇所だけ、ポツンと自販機が立っていた。ちゃんと補充されてるんかな。

ひとまず、無いよりは余る方が100倍マシなので水分確保。

 

 

残り5km。既に体力は限界に近かった。

ずっと漕ぎ続ける事が難しくなり、少し進んでは降りて押して、ちょっと回復したらまた漕いで、段々とそのスパンが短くなっていく。車が来ていない時は、大きく蛇行して少しでも勾配の負担を減らす。

景色が良いのと直射日光を避けられているのが救いだ。登り切ったという経験をこれからの旅に持って行きたい、という気持ちだけでなんとか進み続ける事が出来ていた。

 

 

残り3km。

若干の吐き気すら感じ始めていた。シンプルに身体の限界が来ていた。

あとちょっとなんだけどなあ......あとちょっとがキツ過ぎる......

 

 

と思っていた矢先。

目の前から上り坂が消えた。

 

 

南ルートは最後の2.5km程が下り坂となっている。実質的な頂上はゴールよりも手前にあるという意味だ。

それを知らずにここまで来たもんだから、その喜びはひとしおであった。

 

これ程までに下り坂の有難みを嚙み締めた事があっただろうか。

人気のある場所が見えてきた。出発から3時間弱。

 

到達!

 

やっとの思いでゴール。あと1km登り坂が長ければ本当にダメだったかもしれない......

 

ちなみに、展望台の先に輪っかが設置されており、そこへ目掛けて瓦を投げつける「瓦投げ」なるものがここで楽しめる。5枚で200円だったかな。

輪っかの中を瓦が通ると、願いが叶うんだとか。何名かの観光客が投げているのを観察していたが、中々難しそうだ。

 

 

圧巻の見晴らし。彩り控えめなこの時期ですらこの壮観。

それにしてもようここまで上がってきたな。人どころか家屋までもが豆粒レベルに小さい。半島や小さな島々なんかは片手で掴めそうだ。

 

 

さっき通った内海ダムがちょこんと水を張っている。それだけで不思議とエモい。

視点を変えるだけで、本当にがらっと印象が変わるもんだ。

 

美しいなあ。来て良かった。でももう暫く自転車では来たくないかな......

 

 

思ったより時間が無い事に気付いたので、売店でサイダーとお土産のお菓子を購入し、帰路につく。

行きに上ったという事は、帰りは下るという事だ。事故だけは起こさないよう気を付けながら、登りの辛さを浄化するかの如く怒涛のダウンヒルで下界に戻った。

 

無事、坂手港から船に乗りこみ神戸港へ着岸。大きなトラブルも無く帰宅した。

 

 

 

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初めて自転車で中距離漕ごうという人には、小豆島一周はかなりオススメできる。

観光面も、環境も、規模感も、天候も、ちょうど良い。道路も走りやすい。

今回は旅の本番に向けての練習という立ち位置ではあったが、普通に楽しんで漕ぎ切る事が出来た。寒霞渓ヒルクライムは無茶した自覚があるが、自信に繋がった。

この手応えを忘れないうちに、日本縦断をスタートさせたいところだ。

 

 

さて、いよいよ本チャン。【0日目】に続く。

 

 

 

 

 

 

*1:小豆郡でみれば豊島を含めて19個

*2:12%

【自転車日本縦断旅】自由の為の約束【準備~出発 後編】

 

2022年3月中旬。

とりあえず、最低限揃える物は揃えた...と思う。

充実した旅にする為に、ある程度の軸は固めておきたいね。

後編は、旅の内容や最終仕上げ的な所に焦点を当てて、つらつらと。

 

 

後編:旅程、軸、その他

自分ルール?

自由の為のルールと言えばどこか矛盾しているような響きではあるが、完全な解放状態に置かれたとて結局右往左往すらも出来ず思考停止に陥るのがオチではないか。

ごっちゃごちゃに絡まり散らかしている頭の中を、せめて少しは紐解いた方が良いだろう。自由の皮を被った不自由からの脱却。

 

縦走ルート

一口に日本縦断と言えど、その旅路は各々の個性次第。今回はどんな感じにするかな。

 

 

鹿児島県最南端の岬である佐多岬から、北海道最北端の宗谷岬まで。

スタートは4月。南下ではなく北上なのは避暑の意味合いが大きい。

四国にも足を運びたいので、広島→愛媛はしまなみ海道を通ろう。徳島→和歌山、青森→北海道はそれぞれフェリーを使って海を渡ろうか。

経験が少ない上にソロなのでなるべく内陸を横切るのは避けたかったが、宮崎の高千穂にはどうしても行きたかったので、宮崎→熊本は腹括って頑張りましょう。

滋賀→福井も山越え必須だが、日本海ルートを選択する以上、避けては通れない。

東日本で日本海側のルートを選択しているのは、より近い場所で海の景色に臨みながら漕ぎ進みたかったというのと、ゴリゴリの都市部をなるべく避けたかったというのがある。

あれ、沖縄は?と思われた方も居るだろうが、沖縄~鹿児島間にあたっては移動手段の都合もあり、どうしても他区間と旅の在り方がかなり異なってくる。沖縄は沖縄単体で後日、ぐるっと一周巡りたいと思う。

 

素人の浅知恵で捻り出したルートにしては、良い感じに縦走できそうじゃないか。旅路のイメージが少しでも鮮明になれば、自ずと旅へのモチベーションも上がる。

 

チェックポイントは「パワースポット」

旅に対するそもそものモチベーションは、【出発前】の記事に書いた通り、半分は趣味として、もう半分は着地点を探す目的として。「知らない」を減らす旅。

知識も理解も、考えを巡らすエネルギーも一切足らんなら、エネルギーチャージの出来そうな場所に足を運べば何か変わるのでは、という安直な考えが浮かんだ。

つまりはパワースポット。自然が織りなす壮観や、神秘的な空気が漂う寺社仏閣へ足を運び、パワーを存分に拝借させていただこう。

 

これだけは譲れない拘り

前記事でも書いたが、旅の準備や計画にあたって、過去に自転車旅をされていた先人達の知恵はがっつり参考にさせていただいている。ただ、どうしても引っ掛かる点が1つ、先人の旅の在り方そのものを否定するわけではないけれども、これだけは反面教師として捉えるべきかなと思う点がある。

『野宿』だ。

ここで言う野宿とは、許可の無い私有地での宿泊行為を指す。いわゆる住宅街の公園とか、駐車場とか、ちょっとデカい公民館みたいな建物の屋根の下とか。

旅に関するブログなり掲示板なり見ていると、野宿しない旅なんて旅じゃない!とか、野宿こそが旅人としての箔を付ける!等といった主張が散見される。

気持ちは理解できなくもないが、はっきり言って、旅人という免罪符を盾にワガママを主張しているようにしか聞こえない。

実際に人に迷惑を掛けてなければOK、とはいかない。『自由』というのは「ルール無用」という意味では決して無いだろう。

本当にやむを得ない場合もあるだろうから、マジのガチで一切野宿をするなとは言わないが、せめて公言は慎みたい。

 

今回の旅では、そのような宿泊行為は一切しない。テントを張るのは必ず、公的にキャンプ可能とされている場所に限定する。仮眠可能とされている場所ではテントを張らず仮眠をとる。そのような場所がすぐに見つからない事が想定される場合は、宿泊施設または仮眠可能なネットカフェ等を予めマークしておき、そこで夜を明かす。

これだけは唯一、今回の旅における拘りというか縛り要素として進めていきたい。

 

 

技術面、身体面

自転車を買い、荷物を揃え、旅路および旅のコンセプトもざっくりとだが整えた。

後はひとまず、

・旅に出る前に習得しておいたほうが良い諸々の技術

・中~長距離を自転車で走る上でのペース配分の感覚

を残りの時間でどうにかしなければならないが......

 

自転車と仲良くなる

プロ級のメンテナンスが出来る必要はないにしても、マジで何も出来ません状態で出発しては有事の際に詰む。自分が出発前に予習しておいたのは、

・タイヤ着脱、チューブ着脱、パンク修理

・チェーンの清掃、オイル塗布

辺り。本当に最低限である。

スポークが折れた時の対処やブレーキのメンテ等は、ネットの情報に目を通す程度に留めた。本当はちゃんと出来るようになってから出発するのが良いのだろうけれども...

その分、旅の途中でこまめに自転車屋で点検を行ってもらうようには心掛けた。

なんとかなるやろの精神は、こういう都合の良い時に発揮されるものだ。

 

僕は輪行ができない

遠方に行くならほぼ必須スキルである輪行

結論を言えば、輪行スキルゼロの状態で旅に出た。なんならこの記事を書いている8月現在に至っても輪行ができない。

まあほら、とりあえずフェリーに乗っけとけば、輪行無しでもある程度の移動は可能だろうし、みたいな。

 

正直に申し上げると、輪行の度に自転車の分解と組立てを行うことを考えると面倒臭さが勝ってしまった。

 

いや限界あるやろ。何かあった時にどうすんねん、と。

事後報告になるが実際、今回は輪行スキル無しでなんとかなってしまったのでアレだが、今後自転車旅をしようと考えている方は輪行の練習をしてから旅に臨んだ方が良いかもしれない。

 

いざマメイチへ

自転車に必要な筋肉やスタミナは、多分漕いでるうちに身に付く。

とは言え一回ぐらい慣らしとして、プチ自転車旅という形で練習をしておきたい。

どこか練習に適した場所は......

 

 

なんと、丁度良い場所に小豆島が浮かんでいるではないか。

四国の右上、日本屈指のオリーブの産地。

 

家から程近い港からフェリーで上陸可能。小豆島一周にして80キロ強、キャンプ場も点在しておりテント泊の練習もできる。誰かが仕組んだのかと疑う程に都合が良い。

 

というわけで、1泊2日で小豆島一周、通称『マメイチ』決行。

詳細は別記事にまとめておこうと思う。

本記事では、ハイライトとして写真を数枚載せておくので、どんな感じだったかをざっくりと掴んでいただければ。

 

明け方の出発。日の出を迎えたばかり

ようこそ小豆島へ!

島の南東部は醤油作りが盛ん

記念館でマルキン醤油の歴史を知る

小豆島映えスポット

曇りのエンジェルロード

晴れ間の海は青々と輝く

田井浜キャンプ場。1日目はここで宿泊

2日目。寒霞渓ヒルクライム南側ルートから、内海ダムを見下ろす

登頂。本当に死ぬかと思った

絶景!

春の息吹を感じる

 

筋肉痛は当たり前のように襲ってきたけど、これぐらいの距離なら案外いけそうだ。

加えて、小豆島外周は想像以上にアップダウンが多く、思いがけずして脚を鍛える良い機会になった。

天気にも恵まれ、大きなハプニングも無く、ただその場の思いつきで寒霞渓*1ヒルクライムを敢行したことを除けばマメイチは平和に終わったと言えよう。

 

いや本当に地獄だった。詳細は別記事にまとめるが、旅の本番では身の丈に合ったルートを選ぶべきという事を骨の髄まで思い知らされた。ある意味、今回の最もたる収穫かもしれない......

 

 

 

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2022年4月1日。

年度が更新される日。大学の同期は今日から社会人デビューを果たした。

ごめんよ皆、自分はもう少しだけフラフラしようと思うよ。

荷物の最終確認をしつつ、近所の坂道を走りながら少しでも自転車に身体を慣らしていく。

用意周到に越したことはないが、いつまでも足踏みしていては現状を変えられない。

 

 

鹿児島まで向かう手筈も整えた。出発まであと4日。

次の記事に続く。

 

 

 

 

 

*1:小豆島の中心部に位置する、山々が織りなす渓谷が一望できる景勝地。最高標高は約700m

【自転車日本縦断旅】自転車ってそんな激レアアイテムでしたっけ【準備~出発 前編】

 

自転車で旅に出ようと思い立ち、出発まで残すところ1ヶ月弱。

進捗と言えば、旅をしようと決めた事だけ。

1ヶ月ありゃなんとかなるっしょ。知らんけど。

......とりあえず、何から手を付けようか。

 

長くなりそうなので、前編後編に分割しようと思う。

 

 

前編:自転車、自転車まわりの備品、荷物

自転車で入手困難とかある?

完全に舐めていた。自転車ぐらい、金銭面の都合さえつけば今日にでも入手可能だと、高を括っていた。

無論、そこら辺の自転車屋に展示してあるママチャリやロードバイクなら即買い可能である事は言うまでもない。しかし、今回狙いをつけていたヤツは少々コアな車種であった。

ランドナー」という選択肢

↑こういうやつ ※フリー素材です

知らなくとも無理はない。ロードやクロス、MTB等と比較し、この車種がファーストチョイスとなるようなケースは稀だからだ。

一言で表すならば『旅用自転車』。スピードは程々だが頑丈な作りである上に、荷台等の装着を前提としたダボ穴が付いている。詳細は良い感じにまとめられているこちらのサイトをご覧いただければ幸いです。

自転車の急速な進化の波に取り残された、どこか古臭く、良く言えばクラシックな雰囲気を纏うランドナーは、乗り手を自転車の固定観念から解放する。突出した強みは無くとも、速さを求めず、一人のんびりと長距離を進むにあたって最高の相棒となるのだ。

 

 

2022年3月上旬。早速、詰みかけていた。

完成車が手に入らない。ヤバい。

 

もはや発掘作業

上述の通り現在ではマイナーな車種となったランドナーは、完成車を取り扱うメーカーが絞られている。当然、取扱店舗も少なく、入手難易度が高いのも無理はない。

知識豊富な経験者であれば、パーツ単位でカスタマイズしたり、オーダーメイドで自分だけの一台を作ったりという事が叶うのだろう。しかし、情けない事にそれを実現するには圧倒的な時間不足であり、今旅においては完成車に頼る他無かったのだ。こういう局面で自由になれない自分にヘイトが積もる。

さらには、追い打ちをかけるかの如く襲い掛かるコロナ禍の影響。巣ごもり生活の反動による自転車需要の高まり、世界的ロックダウンによる部品生産・流通の停滞。たった数年で社会の在り方を根本から覆してきたコロナの影響は、自転車とて例外ではない。この影響は予想以上に凄まじく、ネットショップ含む多くのランドナー取り扱い店舗で殆ど売却済、また注文しても納品まで半年、場合によっては1年以上を要するような事態がザラに起きている絶望的状況であった。

もはやショーウィンドウの外から品定めできたものではない。これは発掘作業だ。あの頃目にしたネットコンテンツを令和の大海からもう一度掘り起こすかの如く、途方もない根気と強烈な惹き合わせが今まさに必要とされているという事実を悟ってしまった。

祈るような気持ちで、ひたすら探しまくる。ここは個人的に拘りたいポイントだったので、相棒を他の車種で代用するのは最終的な選択肢としてはあったのだが、それすら程遠くもない場所までじわじわと迫っていた。

 

 

『入荷しました!!』

とある大阪のサイクルショップHPに、爛々と輝く『只今入荷中!在庫あり』の文字。

見つけた。神様がデレた。

予算やサイズなど多少の懸念はあったものの、この機を逃せば後は無い。早速、試乗に出向いた。

 

http://araya-rinkai.jp/fed.html より引用

ARAYA Federal 2021年モデル ダークモスグリーン 500mm

ランドナーの中ではビギナーモデルにあたり、今までママチャリしか乗ったことの無い身体でしっくり溶け込む感覚を得たのは順当な結果と言えよう。いかつ過ぎずまとまりの良いサイズ感のため、自分のような低身長・短足フォルムでも安心して乗りこなすことができる。

その場で即購入し、第一関門突破。最低限、旅には出られるようになった。

第一関門にしては険し過ぎやしませんかね。

今後どれだけの壁にぶち当たるんだか、知りたくもないし、知る由もない。でも不思議と心は軽かったような記憶がある。

4000kmの旅路を共にする相棒、大事にしよう。

 

 

肉付けとQOL

とりあえず、購入した自転車は軽いノリで漕いで帰ることにした。

家まで片道60km、普段から距離走ってる人から見ればどうということもなかろうが、小野田坂道は架空の人物である事を忘れてはならない。身一つの無知な凡人が準備も無しにいきなり走るとなれば、想像以上に堪える距離だ。

見通しの甘さが露呈する。普通にバテた。身体の節々が痛い。危うくケツの大事な部分が取れてしまいそうになった。

 

装備、荷物それから身体的な面も含め、旅の準備は、限界への挑戦を主目的としないならば「生きていけるかどうか」を基準にすべきでない。準備に余裕が無ければ、当然ながら旅にも余裕は生じない。

分かっとるわ、とツッコミを入れられそうだが、意外とやりがちなミスのようにも思う。すなわち「意図的に」QOLを生み出す努力をすべきという事だ。後日談だからこういう事が書けるというのはあるが、旅で得た諸々の教訓はまた別記事にまとめておきたい。

 

装備品・荷物について

自転車への装備品および荷物の詳細については長くなるので、これも別記事にまとめておこうと思う。

先人の知恵を手当たり次第借り散らかし、とりあえず必要そうな物のリストを作成。

ちなみに、リュック以外の全ての装備品および荷物はネット通販で取り揃えた。

暴力的なまでの利便性に恐怖すら覚える。amaz〇n様様ですわね。

 

以下、主要な点のみ箇条書きで記載する。

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ライト(前後)、ベル、反射板は法律上必須なので忘れずに!

・購入時に泥除けが付いてない場合は装着することを強くお勧めします

・スタンドは荷物の重みに負けてしまうので取り外しました。自転車を置く際はどこかに立てかけるようにしていました

・防犯の観点からカギは2種類持って行きました (U字タイプ、チェーンタイプ)

・自転車に後付けしたのは以下の4つ

 ‣リアキャリア(後部の荷台)

 ‣エクステンションバー

 ‣ドリンクホルダー

 ‣携帯用空気入れ装着用の土台

・バッグは4つ

 ‣サイドバッグ × 2 (リアキャリアの両サイドに引っ掛ける)

 ‣フロントバッグ × 1 (ハンドル部分に無理矢理装着*1 )

 ‣リュック × 1 (背負ってましたが体力消耗するので基本的におすすめしません)

・エクステンションバーへの装着物は以下の4つ

 ‣ライト

 ‣ベル

 ‣サイクルコンピューター

 ‣スマホホルダー

・テント、銀マット、寝袋の3点はリアキャリアに積んでヒモで固定してました

要するにこういう感じ

別角度から

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上の写真をご覧になって、どのような印象を抱くだろうか。

大層な荷物どすなあと思われる方もいらっしゃるだろうが、個人的には割とコンパクトにまとまったかなと思っている。人によって持ち物は当然変わってくるので、さらに荷物を装着するのであれば、フロントキャリアの取り付けは必須だろう。

また、荷物の大半が自転車の後部に集中する積み方をしているが、実はあまり良い積み方とは言えないらしい(旅の途中で立ち寄ったサイクルショップのオーナー談)。どうせなら前部に荷物を集中させたほうが、自転車のバランス的にもコントロールの取りやすさ的にも良いと仰っていた。参考までに。

 

 

 

...あれ?何か足りなくない?

自転車旅やバイク旅に興味のある方、以前されていた方であれば、上の写真にちょっとした違和感を抱く方も居るのではないだろうか。

 

『日本縦断中』の看板つけないの?

そう、看板だ。今自転車で旅してますよ~の看板。出発何日目、とか各種SNSのアカウントIDとか書いたりしてるやつ。

旅の道中でも何度か聞かれた質問だ。結論から言うと、最初から最後まで看板は掲げなかった。

逆張りではない。また看板の存在に対して否定的な感情は一切ない。

1つには、外部への発信を目的とした旅ではなかったこと。

2つには、人との関わりを自発的に求めにいく予定ではなかったこと。

粛々と波風立てずに旅を遂行し、そしてこの旅の経験は自分の胸中に丁寧に閉じておこう、という心づもりであったので、看板は掲げず旅を行うことに決めた。

まあ、結果的には旅を通じて様々な人との素敵な関わり合いを経験し、またこうしてブログの形で旅のあれこれを発信しようとしているのだから、不思議な因果を感じずにはいられないけれども。

 

自由であるからこその旅だ。その点を上手く落とし込めさえすれば、看板の有無は大した問題ではないだろう。

 

 

 

さて、大方必要な物は揃ったかな。足りなければ道中で買えばよろしい。

あとやるべきことは大まかなルート決めと、それから...

 

後編へ続く。

 

 

*1:アラヤフェデラルは補助ブレーキレバーが付いている関係でフロントバッグがかなり装着しにくいです。半ば無理矢理ですが装着可能なフロントバッグは有るっちゃ有りますし今回はそれを使っていますが、どう足掻いてもブレーキワイヤーや泥除け等との干渉を避けられないので正直おすすめできません。フェデラルへ適切にフロントバッグを装着する為の対処法としては、補助ブレーキレバーの角度を変える、もしくは取り外すぐらいしか無いかと思われます

【自転車日本縦断旅】実家の床でゴロゴロしてる時間が一番落ち着く【出発前】

胡麻です。

2022年4月7日~6月12日の2ヶ月少々の期間をかけて、自転車で佐多岬(鹿児島)→宗谷岬(北海道)間合計4196kmを走り抜いた旅の記録を、忘れないうちにちまちまと残していきましょうという話。

旅するより記録残すほうがハードル高いかもしれん。深夜に酒でも入れないと文章書けません。1記事完成する度に誰か褒めてください。

今後、自転車で日本縦断(ないし日本一周)を計画されている方、計画はしていないけどやってみたいな~と思っている方、旅ログを眺めるのが好きな方、その他諸々、ここへ辿り着いた方々にとって何か足しになる事が書き残せたら良いかなと思います。

 

 

  • どういう風の吹き回し?
  • 「自転車」「日本縦断」というチョイス
  • イチからのスタートというより

 

どういう風の吹き回し?

2022年2月。

大学の卒業要件を無事に満たし、国家試験もやっとの思いで乗り切った。長きに渡る学生生活が幕を閉じようとしていた。

コミュニティの最下端へブチ込まれては、日を追う毎に不本意にも立場が上がり、やがては追い出され、只管これを繰り返し続けてきた。

気が付けば次の舞台は社会、言うなればオープンフィールド。現実は一人称視点で完全固定されている、という点ではバーチャルと異なる。

一人称視点は厄介だ。周囲を見渡すにも、自身の内面を覗こうにも、不完全だ。

何もかも知らない事ばかりでここまで来てしまった。知る為の手段すら無知に等しい。無知である事を自覚する瞬間ほど不安に駆られる時はない。そのような心的状態で25年、もう直に26度目の誕生日を迎えようとしていた。

半ば諦めに近い感情がグルグルと渦巻いていた。考える事を放棄してしまえば当然楽になれる。元来、物理的にも精神的にも出不精な所があるので、結局一番落ち着くのは実家の御飯を食べ、風呂に入り、床に張り付いている瞬間だった。

 

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